親子

6月の道東。人里を遠く離れた湿原ではタンチョウが子育ての真っ最中。
3月に越冬地である鶴居村や阿寒町を離れたタンチョウのつがいは、繁殖地である湿原や水辺の草原に戻り交尾をして営巣、4月から5月にかけて産卵し1か月ほどでヒナが誕生します。
生まれて1か月ほど経ったちょうど今頃は一番やんちゃな時期。というより親鳥にとっては心配で目が離せない時期でもあります。
どんな動物でもそうですが、天敵に狙われやすいのは子供の時期。タンチョウのヒナたちはまだ飛ぶことができません。だからでしょうか、彼らは自然を味方につけて身を守る術を生まれながらにして身に着けているようです。
下の写真、ヒナがどこかに隠れているのですが、どこにいるかわかりますか?

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ちょっと見ただけではわかりにくいでしょうね。これぞタンチョウ忍術「葉遁の術」。(^^;
タンチョウだけではなく鳥類のヒナに多く見られますが、茶色い羽毛は周辺の緑の草木に同化しやすく天敵の目を欺くにはもってこいです。背が低いので草に隠れるようにして歩くと見つけるのは難儀です。
こうやってちょっと高い位置に出てくるとようやくわかる。

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まだ体は小さいのですが好奇心だけは旺盛で、心配する親鳥をよそにあっちに行きこっちに行き…というのがこの時期のヒナ。人間の親でも子育てをした人なら経験あるでしょうが、親としては気の休まる暇がない。だからいつも両親がつきっきりになります。

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タンチョウは夫婦が協力して子育てをします。キタキツネや、あるいは町に棲む野良猫などでは(人間も??)雄は「子供のことは女房に任せてある!」とでもいわんばかりに子育てにノータッチな場合が多いですが、タンチョウの場合、巣作りも餌探しも子供の教育も夫婦が共同あるいは交代で行います。
タンチョウの父鳥はみんな「イクメン」なんですよ♪

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移動するときはヒナを挟み込むように前後に両親がつき、子供を守ります。

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ちなみにタンチョウは湿原においては生態系のトップに位置する存在で、いったん成鳥つまり大人になってしまえば恐れるものは何もありません。しかしヒナの時期だけは他の野生動物に狙われます。だからこそこの時期の親鳥たちはヒナを守るために神経質になっていて写真を撮るにも容易に近づくことができません。だから600~800mmといった超望遠レンズが必須になります。
そんなガードの堅い親鳥の警戒を縫ってヒナを狙うのは…キタキツネが多いですね。

この日も、茂みに隠れながらヒナに近づいてきたキツネが一匹。
しかし、親鳥は機敏に気付いてキツネを追い回します。

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タンチョウは見た目の優雅さとは裏腹に性格はかなり獰猛な部分があります。キツネもヒナこそ狙いますが成鳥のタンチョウとケンカをしたらとても勝ち目はありません。羽を広げて威嚇するタンチョウの前にすくんでしまいます。

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まともに一対一で「決闘」をしようものなら、あの鋭いまさに「ツルハシ」そのものの嘴で一突きされてキツネなどはたちまち殺されてしまいます。実際、ヒナにちょっかいを出されて激怒した親鳥にキタキツネが突き殺される瞬間を見た人がいます。キツネもそれはよくわかっていますから、この時もほどよいところで逃げ出しました。

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しかしキツネとて生きるためには餌を捕らねばなりません。野生の世界では「狩り」をあきらめることは「死」を意味します。ある命が生きながらえるためには他の命がどこかで犠牲になっている…それが自然の掟であり「食物連鎖」による生態系の維持につながっています。ただ、彼らは自分の生きるのに必要な分しか獲物を捕りません。人間のように手当たり次第に乱獲して生態系を破壊するようなことはしませんから…。

タンチョウのヒナは生後100日ほどで飛べるようになります。4月生まれのヒナですと8月の初め頃ですね。そのころには茶色い羽毛も白く変わってきて体の大きさも親と同じくらいになり「ヒナ」ではなく「幼鳥」と呼ばれるようになるのですが、よく観察していると今の時期でも親鳥が羽ばたくのを真似して「練習」しているように見えますね。

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もちろんまだ「遊び」の段階なのでしょうが、こうやって遊びで真似をしていくことが飛び方を学ぶ基礎になっていくのかもしれません。「学ぶ」という言葉は「真似る」からきている、という話を思い出しました。
親鳥も「ほら、こうやるんだぞ!」と言って教えているような。
見ていてちょっとほのぼのとする光景でもあります。

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やがて道東の短い夏が終わり10月になってあたりが紅葉に包まれるようになるころ、彼らは親子そろって繁殖地の湿原を離れ、越冬地である人里に向かいます。そして親子そろって冬を越し、春先の子別れを迎えるまでの間、親鳥はこまやかな愛情の中で子育てを続けていくことになるのです。

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この記事へのコメント

2016年06月29日 23:31
厳しい自然の中では夫婦揃っての育児が重要なんですね
雛の羽ばたきがかわいい〜
狐を威嚇する親鳥、羽を広げると大きさに驚きますね!
2016年06月29日 23:37
タンチョウさんは、育メンなんですか。
素敵な旦那様ですね。
鳥が羽を広げると意外と大きくて、怖いと思います。
タンチョウの立場からだと、狐を追い払えてよかったねですが、反対に狐の立場からだと、捕まえられずに残念。何か食べられた?です。
2016年06月30日 22:39
マーシャの乳母やさん
哺乳類は子育ては雌だけが行うことが多いですが、鳥類は夫婦協力型が多いですね。ワシタカの類もそうです。
タンチョウは羽を広げるとその幅(翼開長といいます)は2mちょっとになります。体高も150cmほどありますから、鳥仲間では最大級といっていいでしょう。間近に見るとその大きさに圧倒されますよ。

猫ねこネコさん
あのあと、どうしたのかな、あのキツネ。
たぶんノネズミか何か捕まえて食べたのでは?
この時期、母キツネは子ギツネのためのエサも探さなければならず常に空腹状態です。
野生の世界はやはり厳しい…。

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