SL冬の湿原号

今回の旅の最初の二日間はこれも毎年恒例のSL撮影。
「SL冬の湿原号」。
毎年1月末から2月いっぱいまで走っている北海道唯一のSL列車です。

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運転区間は釧路から釧網本線の標茶まで。
釧路湿原の東側の縁に沿って走り、車窓からは冬の湿原の風景を眺めることができます。時折エゾシカやタンチョウ、あるいはキタキツネの姿を見ることも。約一時間半の汽車旅は観光客には大人気で最近は海外から来られた方々も多く乗車するようになりました。

私にとっては、タンチョウ撮影に入る前に体を北海道の気候に慣らすためのウォーミングアップを兼ねています。東京から着いた翌日いきなり-20℃超の早朝撮影はさすがにキツイですから、日中の撮影だけで済むSL撮りを一日半やって体を慣らしておこうと。(^^;

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今年は去年までに比べてSL撮影で訪れたカメラマンの数が多かったような気がしますね。例年の3割増しくらいになっていたような。
それというのも「冬の湿原号」の運転が今年限りになってしまうのではないか?という噂が飛んでいたせいでして。

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SLというのは維持にお金がかかる機械。半世紀前のように日本国中にSLがいた頃ならいざ知らず、国鉄がJRとなりSLの修理補修ができる場所も限られてしまった現在、昔とは比べ物にならないくらい「金食い虫」になってしまっています。
鉄道車両も自動車と同じように「車検」を受けねばならず、検査期限の切れた車両はレールの上を走ることができません。鉄道車両の場合は「全般検査」と呼ばれますがSLの場合は原則として4年に一度この検査をパスしなければなりません。そして現在、SLの全般検査にかかる費用は億単位となってしまっています。JR北海道にとってはこれはかなり重い負担でして…。かつてJRが「国鉄」だったころはそんな心配はしなくてよかったんですけどね。お国がお金出してくれましたから。

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昨今、報道でご存知の通りJR北海道の経営状態は極めて悪く「正直言ってSL運転どころではない」と言う人もいるほど。昨年も一部の不採算路線を廃止しましたが、その後も路線縮小の検討がなされていて先日発表された「単独では維持が難しい路線」の中には「湿原号」の走る釧網本線も入ってしまっています。「湿原号」どころかそれが走るレールそのものがなくなってしまうかも…という危惧もあるのです。
実際問題としてそうそう簡単に全線廃止・バス転換ということになるとは思えませんが、先行きに明るさが見えないというのが事実です。

北海道東部に暮らす人はほとんどがクルマを持っている人たち。というより「クルマがなければ生活できない」地域です。でもだからと言って「鉄道は不要」と割り切ってしまっていいのでしょうか?
「バスでいいじゃないか。便利なんだし」という意見もあります。
しかしクルマを使ってる人がほとんどであるのに廃止反対の運動が地元で起こるのはなぜ?
鉄道と言うのは利便性とともにそこに暮らす人々にとって心のよりどころでもあるんですよ。あの二条のレールを伝わっていけば全国どこにでも行ける…それが断ち切られることの寂しさはその地に暮らしている人でなければわからないでしょう。「自分はあまり乗ることはないけどなくなってしまうのは寂しい」という方、あまりにも多いです。

国鉄が分割民営化してJRになった時、こうなることはある程度予測できました。新幹線を抱える東日本・東海・西日本そして九州と比べるとJR北海道とJR四国はあまりにも不利なのはわかり切っていました。それなのになぜあんな分割の仕方をしたのか、いまだに納得できません。分割民営化後まもなく30年、会社ごとの格差は開く一方、地域によっては会社間の境目の利便性の悪さも言われていますね。(特にJR西日本とJR東海の間…大垣~米原間の便の悪さと言ったら…)

そしてそもそも、民営化して本当によかったのか?
公共交通機関というのは「採算性」第一で運営していっていいものなのかどうか。鉄道発祥の国、イギリスも国鉄からの民営化は行われましたが、その路線網は国鉄時代とほとんど変わっていないばかりか一部拡充された路線もあります。この日本との違いはいったい何でしょう?
民営化はイギリスのような平坦な地形の多い人口密度のバラツキも比較的小さい国土だから成り立つのであって日本のような山国で繁閑の差が大きくなりやすい国では難しいと思うんですが。
不採算は承知の上でいいと思うんですよ。それは赤字にもなるでしょう。でもそれは国家財政を圧迫するほどのものになるとは到底思えない。少なくとも役に立たない議員や役人に金払うよりよっぽどいいと思うのは私だけでしょうか?

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今のところ、信頼すべきスジからの情報では「冬の湿原号」の運転は当面数年間は維持されると言われています。そして釧網本線についてもその存廃については今後ある程度の期間を設けて検討するということです。
美しい大自然を望みながら列車旅のできる路線がいつまでも維持されてくれることを祈りたいですね…。


P.S.
「湿原号」を牽引しているSLに不具合が発生したとのことで、明日以降残りの運転日はディーゼル機関車による牽引に切り替えることになってしまったそうです。
三年前まではもう一台SLがいて「代打」が効いたのですが、今は一両を手放してしまったので代わりがいない…これもJR北海道の台所事情の苦しさを物語っていますね。
明日以降のSL運転を楽しみにしていた方々にとっては本当に残念ですね。

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この記事へのコメント

2017年02月10日 23:49
こんばんは。
ステキ、海外からの観光客も大感激しそう、とウキウキ読み始めましたが、厳しい現実!
最近、ずいぶんと海外に手土産を持って行く方がいますが、国内が大変な時、どこにそんな大金が余っていたのか、と不審です。
もっと国内の必要なところに使ってほしい。国内がこんな状態では、海外の観光客誘致も足下から崩れてしまいますよ。
足のないわたしも人ごとではありません。
2017年02月11日 22:29
毎日ばらいろさん
外国との付き合いが必要なのはよくわかりますが、国内事情を後回しにしてまですること?と思う時が往々にしてありますね。
「地方創生」という言葉のみ先行しているようで空しいです。鉄道に限らず実際には「中央重視・地方切り捨て」になっているのが実情。これでいいんでしょうかねぇ…。
2017年02月11日 23:25
SLも郷愁だけでは維持できませんよね~ お金、ですよね~ 見も蓋もないけど。。。
せっかく釧路湿原を観光するなら自動車より電車、電車よりSL列車
観光日本を目指すなら、こういう所から考えないと! 
2017年02月12日 11:18
マーシャの乳母やさん
釧路湿原、道路からだとよく見える場所は少ないです。西側の国道も東側の国道も丘の反対側を回りこんでいる場所が多いので…。鉄道線路だけが本当に湿原の脇を縫って走っているんですよね。じっくり湿原を観察するにはやはり鉄道です。
夏は湿原鑑賞のためにノロッコ号も走っていますよ。

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